三章:痛みよりも辛い快感

三章:痛みよりも辛い快感
 四日目は昨日と打って変わって憂鬱だった。昨日確かに謝罪してくれたけど、アイツがセクハラしてきたのは間違いないからだ。
「昨日はごめん。お詫びと言ってはなんだけど、今日は部屋自分できれいにしておいたから」
 確かに普段よりその部屋はきれいだった。ゴミ箱から溢れたティッシュの量も少ないし、軽く掃除機がかけられた形跡もある。
「だから今日は勉強真面目にするよ。ほら、これお詫びに『ローヤルブルーティ』のダージリンを取り寄せたんだ。一本五千円もするんだよ」
 机の上にワイングラスと木箱入りのボトル紅茶が置かれている。昨日のあれより、一生懸命謝罪しようとしている珍しい金成君が何となく哀れだった。ひょっとして誤り方とか知らないのかな。
「もう、いいのに…」
 そう言いながら数学のテキストを開く。
「じゃぁ勉強する前に乾杯しよ。フヒッ、織乃、サーブしてよ」
 そういって木箱を指差す。前言撤回、金成君の謝罪の手土産なのになんで私が開けなきゃいけないのよ。そう思いながら箱を開ける。しかも開封済み。瓶の中には三分の二ほどお茶が入っている。
「あんた、我慢できずに飲んだでしょ」
「ヒヒ、バレちゃったか。前から飲んでみたかったんだよね。あ、瓶のラベルは上に向けてね、フヒヒ」
 ほんっと面倒くさいやつ。ワイングラスに三分の一ほどそそぐ。これぐらいでいいんだったっけ。
「じゃぁ、織乃のアルバイトに乾杯」
 グラスを軽くあげる。ニヤニヤしながら金成君がこっちを見ている。本当に気持ち悪いなぁ。できるだけ意識せずにグラスを傾ける。ふわっと香る甘い紅茶の香り。そしてさらっと舌の上に流れ込む芳醇な味。すごい。こんなの飲んだことがない。今までのお茶とは比べることもできない高貴な甘さと苦さのバランス。思わず、アルバイトのこととか金成君の体臭とか全部忘れてしまう。
「うん、やっぱりブルーティーの味は違うねぇ。うまいよ」
 その言葉が私の余韻をぶち壊して現実に引き戻す。
「ほら、勉強するわよ」
 そして従順に金成君は勉強し始める。私の言うことを彼が聞いてくれる時、なんとなく優越感を感じてしまう。
 そして八時半ぐらい、少し疲れてきて休憩でもしようかと思ったときだった。
「ねぇ、織乃」
 そう声をかけられる。
「なに…んんむ…」
 声をかけられて顔を上げた瞬間、目の前に金成君のお世辞にも整っていると言えない脂ぎった顔があった。唇にカサついた別の唇が重ねられる感触。
「んん…」
 え、舌、舌をねじ込まれているの。混乱する。口の中に自分のものではない別の舌の感触。かすかにさっきのお茶の芳醇な味が舌に感じられる。無理やり床の上に押し倒される。
「やめっ…んんっふ」
 拒否しようと開いた口に無理やりねじ込まれる舌。私の制服の上を這い回る別の生き物のような太い指。
「あっ…んっ…」
 息ができなくて吸い込むたびにチュッと吸い上げられる。スカートの中に入ってくる指。えっ…次の瞬間下半身が甘くしびれる。何、何が起こっているの。
「んふぅっ…」
 口から漏れる自分のものとは思えない色っぽい吐息。
「織乃の口最高だよ。フヒヒ、ヂュルルルル」
 そう言いながら金成君が私の唾液を吸い上げる。彼の手が制服の中に入ってブラをずらす。んんっ乳首弾かれちゃったぁ。
 キスを止めない金成君。彼の体重がガッチリと私に乗りかかって動けない。乳首を弾かれながら、いつの間にかショーツの中に指を入れられちゃってる。
「はぁはぁ…はぁ…はあ…ああっんん!」
 やっと口が離れる。酸欠状態の肺が空気を求めて口を大きく開ける。そこから漏れてしまう変な音。
「織乃、かわいいよ!」
 そう脂ぎった声を上げながらセクハラする金成君。
「やめっ…」
 そう言おうとした瞬間下半身から電流が走った気がした。
「ここが織乃のおまめちゃんかぁ。ムキムキしましょうね、フヒヒ」
「んんん…」
 口を閉じて声を我慢する。これ以上変な声を出したら自分でもおかしくなってしまいそうだからだ。
「フヒヒ、じゃぁ風紀委員長の割れ目チェック」
 一気に片手でショーツを刷り下げる。太ももの部分でショーツが中途半端に脱がされたせいで足が動けない。それにもう片方の手で乳首くりくりされてしまって少しでも気を抜けば変な感じになりそう。なんで…なんでぇ…
「織乃のスイッチ入っちゃってるじゃん。嫌なのかな。まぁ、見ててよ。スイッチ入れるの得意だからさ。フヒヒ。親指でおまめちゃんをよしよししながら中指で割れ目をクチュクチュしてあげるね」
 その次の瞬間、体が跳ねる。えっ、視界がフラッシュするようなピリピリした快感。思わず怖くなって金成君を掴んでしまう。
「いいでしょ。ヒヒ、織乃のお股もすっかり濡れ濡れでおチンポ様をお迎えしたくてウズウズしてるよ」
「やめて!やめっっ…んんんん!」
 拒否しようとした次の瞬間再び下半身に電流が走る。そして私がはねた瞬間を見計らって金成君がズボンを脱ぐ衣擦れの音がする。
「ダメ、ダメぇ…ああ!」
 逃げようとするのに全身が弛緩して動けない。すぐに金成君のところに引き戻されてしまう。立ち上がってふらふらと逃げようとする私をまるで獲物を仕留めるように豚男君が押し倒す。
「ちゃんと気持ちよくしてあげるからさ。僕結構うまいんだよねぇ、フフフ」
 そう言って拒否する私の顔にキスの雨を降らせる。拒否しているのに、耳の裏を舐められ、首筋をくすぐられ、そのたびにゾクゾクするような快感がせり上がってくる。下半身に感じるすごく熱い欲望の感触。いきなりのことなのに、今まで知らない感覚がどんどん私を侵食してくる。
「んん…」
 ダメなのに、逃げられない私の大切な場所に最低のキモオタペニスが入ってくる感触。嫌なのに首筋を座れ、乳首をコリコリこすられながらだと下半身がポワポワしちゃう。おかしい、吉邑君との時はあんなに痛かったのに。全然痛くない。
「レロ、レロ~織乃の首筋すごくおいしいよぉ。それにオマンコもキュンキュン締め付けて可愛らしいよぉ」
気持ちよさそうに金成君が言う。でもそれに答える余裕は私にはなかった。ズンッと金成君が体重をかけて腰を振り下ろしたから。
「ひんっっんんんん!!!」
 声を抑えているのにそれでも漏れてしまう。ズンッっズンっつかれるたびにおかしくなっていく。さっきの軽い電流がマグマに変わったように全身が熱くて、気持ち良い以外の感覚がない。硬い床の上のはずなのにふわふわとろけるような間隔。私の内側に打ち込まれる熱い感触。
「フヒヒ、織乃のイキ顔見せてよ。優等生のクラスメートが僕の下でキュンキュンちんぽ締め付けてきてるよ」
 そう悪魔が笑いながらスピードを上げる。ダメ、ダメ、おかしくなっちゃう。こんなの私知らない。知らない恐怖がどんどん下半身を支配してせり上がってくる。
「イッちゃえ!」
 その言葉とともに、悪魔が両乳首をきゅっとひねりながら腰を振り下ろす。全身が震える。今まで知らない私の奥深くの快楽中枢を直接つままれたような快感の電流。
「ああああああっっっ!」
 声が出てしまう。私の中の何かが全て出ていくような凄まじい快感。ビリビリと絶頂感が何秒も続く。
「風紀委員長のイキ顔かわいいね」
 そう耳元で囁かれて唇を奪われる。弛緩した私は抵抗できず受け入れてしまう。舌と一緒に注ぎ込まれる甘い唾液。スールカーストの最底辺の舌が慣れた手付きで私の軟口蓋を愛撫する。そのたびにピリピリと軽い快感に頭の奥がしびれる。
「フヒヒ、かわいいからもっと見せてよ」
 レロレロっと愛撫しながら悪魔がイッて再び腰を下ろした。
「ひんっ!」
っと惨めな声を上げしまう私の口。汚らわしい肉棒が入ってくるたびに禁断の稲妻が全身を麻痺させる。
「織乃ぉ、いいよぉ!チュウチュウ僕のチンポに織乃マンコが吸い付いてきて柔らかく抱きしめてくれてるよ!好きだ!好きだ!」
 そう絶叫しながら腰を押し付けてぐりぐりと私の奥を刺激する。ダメ、やばい、でもやばいなんてとっくに過ぎちゃってる。
「んあっんんむっひゃんっ!」
 声を抑えてもどんどんでてしまう。とめどなくあふれる異常な感覚。
「…んんふぅっらめっひゃぁ…」
 敏感な私の股間がまるで私のものじゃないみたいに媚びてしまう。そしてどんどん激しくなる。クチュクチュと淫らな水音が速さをまして、私を再び快楽の絶頂に突き落とす。
「あっんんんふぅっっ」
「イッちゃえ」
 その一言ともにねじ込まれ一気に引き抜かれる激しい快感。再び視界がホワイト・アウトして全身が痙攣する。
「ひゃあああああああ!」
 ひどく淫らな私の声。次の瞬間パタパタと雨音のような音がした。白い液体がメガネにかかる。制服にも。
「ふー、なかなか良かったよ、織乃。風紀委員長のくせにやることはやってたんだな。吉邑とか?イヒッ、中古の穴にしては悪くなかったよ」
 最低だ。そう思いっきり罵ってやりたいのに全身から力が抜けて言えない。気だるい絶頂感のせいでまだ全身がほわほわしている。そして鼻につく青臭い匂い。掃除させられていたティッシュと同じ匂いだ。ああ、これの匂いだったのか…脱力しながら頭の片隅で納得する。
「吉邑のやつ下手なんだね。全然開発されてないし、絶頂にもなれてないね」
「んん、そ、そんなんじゃないわよぉ…」
 かろうじて反論する。私のスカートの裾で悪魔はペニスを拭いていた。
「ゲーム以外にも、織乃に教えられることがありそうだね。僕ってさ、親父の妾に仕込まれたせいでエッチだけはちょっと自身があるんだよね。まぁ、素人相手にやったの初めてだから自信なかったんだけど、これで自信ついたよ。少なくともサッカー部のエースよりはセックスうまいってね、フヒヒ」
 そう言って私を放置して部屋の片隅の扉を開ける。そこはシャワー室だった。鼻歌交じりにシャワーを浴びる金成君の気色の悪い声が耳に残る。
 でも一番気色が悪いのは私自身だ。吉邑君じゃない相手にこんなに感じちゃった。全然抵抗できなかった。知らない快感にあっという間に体を委ねてしまった。最低だ。温かい涙が頬を伝ってメガネから垂れたアイツの汚らわしい体液とまざる。
「織乃、余韻に浸るのもいいけど、そんなエッチな姿晒してるとまた僕我慢できなくなっちゃうかもよ。あ、制服の替えと下着の替えは脱衣所においてあるから。クラスメートとのエッチのイメクラ用に制服とか下着とか買っておいてよかったよ」
 慌てて起き上がる私の背中に金成君そういう。確かにシャワー室手前の脱衣所には近隣の学校の制服やら女子の下着やら気持ち悪いコレクションが並んでいた。
私が金成君の家を後にしたのは十一時過ぎだった。すでに定時は終わっていたけど、怒りと悲しみに任せて金成君に説教して、最終的に謝罪を引き出すのにそれだけの時間がかかったのだ。最後に謝罪の気持ちとして10万円を包まれた時ははったおそうかと思った。そしてそのお金を拒否した私に金成君が、織乃ただマンでいいのっと言ってきたので思わず叩いてしまった。
 帰宅途中、スマホを開く。良くんから寂しそうな着信履歴、金成君がまた高級アイテムを謝罪の気持ちとして押し付けてきている。

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