【新作】オタクに寝取られた彼女;プロローグ;それはあまりにも甘い1ページ

俺の幼馴染、立霧織乃(たてきりおりの)はいつだって俺のあこがれの相手だった。父さんの仕事先の社長の娘という少し気後れしそうな相手なのに、真面目すぎる彼女はその真面目さのせいで気後れしたことがなかった。
 小さな印刷会社の社長と従業員の娘と息子。必然的に家も近いし家族ぐるみの付き合いも多くなる。そもそも幼稚園からずっと同じ学校に通ってきて人生の三分の二は一緒に過ごしてきたと思う。生真面目で、いつだって俺よりテストの点数も良くてサッカー以外取り柄のない俺とは大違いだった。
 顔だって少しきついけどかわいい。まぁ、眼鏡で優等生で風紀委員なんて絵に書いたようなとっつきづらい優等生だから誤解されるのも仕方がないかもしれないが、そんな織乃を俺は理解してやりたい。
 成長するとともに普通の男女は趣味が違ってくるから幼馴染でも疎遠になっていくものだと思う。特に高校に上がってから織乃は予備校に通い始めたし、俺はサッカー部のスタメンになって忙しくて会えなくなったのは確かだ。でも、そんなときに織乃が提案してきたのがスマホのゲームだった。
 ファンタジー・ギア・オンライン。どこにでもありそうなありふれたスマホアプリのファンタジーゲームだ。でも、普段ゲームなんてあまりやらないで小難しい文庫本でも読んでいそうな織乃がわざわざ提案してくれたことが嬉しかった。
「これで家にいても一緒にゲームができるでしょ」
 織乃が予備校から帰る十時過ぎから一時間、通話しながら二人でゲームするのが高校時代の日課だった。適当にゲームをしながらまったりとその日のこととかを話しながらゲームするのが楽しかった。いつも十一時過ぎに織乃が名残惜しそうに言う。
「もう十一時よ。残念だけど、もう寝なきゃいけないわね」
 サッカー部の俺はいつも朝練で六時前には家を出ていたから、そんな言葉も俺への気遣いだった。そしていつの間にか俺はサッカー部のエースになっていた。というかエースにならないと彼女の進学目標の学校へスポーツ推薦は無理だし、エースになっても難しいほどだった。夏の大会の結果次第だ。
 だから、四月十日、彼女が大人になるその日に俺は告白した。グランド端の桜の樹の下だった。これから数ヶ月、俺は今まで以上に頑張らなければならない。だから、
「織乃、好きだ!バカな俺じゃぁ釣り合わないかもしれないけど、付き合ってくれ。そしたら俺、織乃と同じところに行ける気がするんだ!」
 そういったときにふっと織乃が舞い散る桜を見た。桜色に染まった彼女の顔はずっと一緒にいたのに新鮮で、小学校のときにピアノの発表会のステージで盛大にころんだときより赤かった。
「本当にバカね。もっと早く言ってくれても良かったのに」
 ポリポリ頬をかきながらはにかんだ風にそういう織乃。
「それに、吉邑(よしむら)君だって女子に人気あるんだから私と釣り合わないかも」
 そう照れながら言い返す姿はとても彼女らしかった。
「え、マジで。そんなに俺女子の間で人気なのか?」
「そりゃぁ、吉邑君、サッカー部のエースだし、優しいし顔だってかっこいいってみんな思ってるよ」
今度は俺が照れる番だった。
「いや、まぁ、そんなんじゃねーよ。体育バカだし、織乃しか見えてなかったし…」
「も~、すぐそういう恥ずかしいこと言う。だから吉邑君はバカなのよ!だいたい今日部活どうしたのよ。体育バカのくせに!」
「ホラ、今日は織乃の誕生日じゃん。春休みも部活で忙しかったし、今日は無理言って休ませてもらった」
 本当はもう五年も彼女の誕生日のたびに桜の樹の下で告白したいと思っていた。脳筋の割に勇気が出なかった。でも、もっと早く告っとけばよかったと今更思う。
「そっか、じゃぁ久しぶりにうちに遊びにこない?」
 なんとなく意味深な表情で俺を見上げる。そんな顔するなよ。真面目な風紀委員長がそんな風に笑ったら男子はみんな風紀違反しちゃうぞ。そんな馬鹿なことを思いながら俺は織乃の手を握った。子供の時のように手をつないで織乃の家に帰る。
 社用バンの止まる4階建ての古びたビルが織乃の家だった。一階の倉庫と駐車場、2階は印刷所と事務所だった。昔からよく遊んだ織乃の家の騒がしい印刷機の駆動音。
 それを久しぶりに聞きながら見慣れた居間に案内される。
「ちょっとまってて…」
 そういったまま彼女がどこかに消える。お茶かな、お菓子かなと思いながら待っても一向に戻ってくる気配がしない。そしてドライヤーの音がして、戻ってきた彼女は私服だった。
「はい、シャワー浴びてきて。朝練の臭い、まだ残ってるわよ」
 そういってタオルを渡される。そこまで行ってやっと俺は気がついた。
「え、え、えぇ!?タオルって、シャワーって、そういうことだよな」
「何今更慌ててるの。吉邑君やっぱ、バカね。本当はね、今日こうなるんじゃないかって思ってたの。最近吉邑君、なんかソワソワしてたから。
 はい、つべこべ言わずシャワー浴びてくる!」
 そういって命令する風紀委員長、立霧織乃!メガネをクイッとするその表情の破壊力は抜群だ。
 シャワーを浴びると、織乃は居間にいなかった。どこにいるかはわかっているのに、ふーっと覚悟して上の階に上がる。屋根裏部屋のような最上階の小部屋が織乃の部屋だった。
 ノックする。
「入っていいわよ」
一体いつぶりだろう。思い出せないその日より前は何度もこの部屋に入ったことがあるはずなのに、いつの間にかここはとても遠い部屋になっていた。でも、俺は帰ってきた。
「親、いるんだろ。いいのか」
 思わず緊張してぶっきらぼうになってしまう。
「印刷機の音で聞こえないわよ!だから、優しくしてね。痛いらしいから」
 そうベッドの上で恥じらう織乃は俺が知らないほどに可愛くて思わずその唇に唇をかさんて抱きしめる。あ、織乃ってこんなに細かったんだ。いつも隣にいるのに気が付かなかった真実にドキッとする。いやドキッとするどころか胸がドキドキドキドキうるさくして仕方がない。
「もう、なんだか緊張するわね。心臓の音がすごくうるさいし」
「ああ、俺も同じだよ」
 そう言って俺は再び唇を重ねる。さっきは緊張しすぎてわからなかったかすかな桜色の匂い。チュッっと軽く唇を重ねるだけの甘い口づけ。世の中にはもっと深いのがあると知っているけど俺も織乃も勇気がなかった。
「吉邑君の胸板ってこんなに広かったんだ」
「お前こそ、こんなに細くて柔らかくて抱きしめたら折れそうで怖いんだけど」
 そう言いながら抱き合いつつ彼女の匂いのするベッドに倒れ込む。俺の男の部分はもう我慢出来ない。
「焦らないで。準備してよ!」
 そういって彼女の視線が枕元を指す。コンドームだ。
「ああ、ええっと」
 緊張してパッケージすら開けられない俺。
「体力バカなのにこんなときは力ないのね」
 彼女がくすくす笑ってコンドームを開けてくれる。俺は恥ずかしくて後ろを向いてズボンを脱ぐ。勃起した一物とにらめっこしながらコンドームを付けるのはかなり間抜けだ。
「…んっ…ふっ」
 控えめな吐息が聞こえてきて手元のちんこが震えてうまくゴムがはいらない。
「あっんふぅ…」
 振り返ると織乃が全裸だった。白い肌が恥ずかしそうに染まっている。
「吉邑君の知識ってどうせAVだけだから、ちゃんと私が自分で準備するのよ…っんん…っはぅ…。AVって間違った知識多いんでしょ…」
 自分で準備するほうがAVよりエロい気がすると心のなかで思ってしまう。でもそんな俺の思いが顔に出たのか、織乃が怒る。
「んっ、コラッ恥ずかしいんだからぁ、後ろ向いてなさいよぉ。服畳んで!」
 これ以上うるさくならないと思っていた俺のドキドキがさらに大きくなる。なんだよ。鬼風紀委員長がこんな可愛くコラって言うなんて聞いてないぞ。しかもなんだかいいにおいするし。ズボンや下着をベッドサイドにたたみながら恐る恐る振り返る。
「あっ…はぁぁんん!」
 震えながら身をくねらせる幼馴染。やばいやばいやばいよ、織乃可愛すぎて俺、もう我慢できない!
「あああぁ、織乃ぉ!可愛すぎる」
 思わず抱きしめて震えるほそい体を再びベッドに押し倒す。
 チュッと三度目の口づけ。俺、彼女と抱き合ってる。ドキドキのままに彼女の割れ目を探す。人肌のベタベタの液体。
「んっ…わからなくてローション出しすぎちゃったのよぉ…」
 わからないままの未熟な俺達は合体する。心は一緒だ。一つになる。2つ下の階で俺たちの親が働いている。印刷機の騒がしい音もこの部屋までは届かない。
「あっ…感じるよ、吉邑君!」
 そういった瞬間、抵抗を感じる。
「ああ、やばい俺もだ!」
 コンドーム越しでも感じる暖かくて狭い彼女。ああ、こんなにも織乃は女子だったんだ。近すぎて、友達過ぎて忘れていたリアルに任せて一気に俺たちは一線を越えた。薄い薄い一線だった。俺と彼女を隔てていた友達という薄皮のような薄い一枚の膜。
 じわっと熱い間隔。見下ろすと俺の下で織乃が必至そうに目をつぶっていた。
「痛いのか?」
「痛くないわけ無いでしょ!だから、早く終わらせて。私の心が熱いうちに!」
 そう叫ぶ織乃。
「ああ、ごめん。でも、俺、織乃が好きすぎて止められそうにない!」
 熱い血潮がゴムの無機質な薄膜越しでも感じられる。やばい、やばい、やばい、ドキドキして暴走してしまう。こんなにも織乃のことが好きなのに止められない。
「あっ…んっ痛い…けどぉ…きてぇ」
 普段の凛々しい風紀委員長が怯えたように小さな声でそういう。だめだ、どんどん俺の知らない女の子の織乃に出会ってしまう。10年以上も一緒にいたのに、こんなにも近くにこんなにも俺の知らない愛しい人がいた。もう無茶苦茶な思考に導かれて俺は腰をふる。彼女の痛そうな表情を見ながらも、同時に彼女の優しさに触れる。
「はぁ…あぁぁ…だめだ、俺、織乃が好きすぎて壊れてる。織乃のこと傷つけたくないのに止まらないんだ」
 そう叫びながら口づける。
「ああ、もう吉邑君っ…んあっバカぁ」
 そのバカが可愛すぎて俺の時が止まり、愛と恋と欲望の混じった青春が飛び出してしまう。そういえば、織乃俺以外にバカって言わないよな、なんてバカなことを考えながら。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 俺も織乃も息を荒げながらドキドキお互いの心臓の音を聞きながら横になる。俺たちはお互い同じ音を奏でてる。
「本当に、こんなんで良かったのかな…」
 そうあまり見たことのない彼女のベッドの上から見える天井を見ながらボソッという。彼女のベッドは俺には少し小さすぎて半分はみ出ている。
「バカ、今更そんな事言う!?
吉邑君は、国体に出てスポーツ推薦枠で入る。バカなアンタにできるただ一つの方法でしょ。私もガリガリ勉強して受験に合格する。これから今までよりもっと忙しくなるの!遊びに行けないし、一緒に帰れない。せっかく恋人同士になったのに、何もできないのよ。吉邑君がおそすぎるから!こんな思い出でもなきゃやってられないでしょ。私とアンタはカップルなの。
 一緒に登校できなくても、デートに行けなくても、それでもアンタは私の初めての人で彼氏なのよ」
 そうまくしたてる彼女の口調はとても風紀委員長っぽくて真面目で、それなのに言っている内容はむちゃくちゃで。バカな俺にも織乃が人生で一度しか人にあげられないものを俺にくれて、励ましてくれたことはわかった。
「そうだよな…」
「風紀委員長自ら不純異性交遊してあげてるのよ!わかったらさっさと国体まで駆け上がってきなさいよ!そしたら私は迷わず合格できるんだから」
「ああ、わかった。俺、織乃と一緒にいたいから」
 そういって彼女の柔らかい唇に夢見心地のまま俺の唇を重ねる。もう何度目かわからない。俺はただ壊れるほどに愛おしかった。

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