【ジブリ】『君たちはどう生きるか』雑感

さっき見てきたばかりで全然まとまっていません。ネタバレ無しで一行で感想を書くなら、

『おじいちゃんのありがたい話は時々要領を得なくなったり回りくどかったり分かりにくかったりするけどやっぱり、意味はあるんだと思う』みたいな感じなきがします。

以下ネタバレあり

事前に原作とはほとんど関係ないとどこかで読んで、4-5年前に読んだ原作のことなんかほぼほぼ忘れて見に行ったんですが、めっちゃ後悔しました。というのは、おそらく宮崎流に原作を解体して再構築したのがこの映画だと思うからです。

原作の出版『君たちはどう生きるか』は1937年出版の作品です。そして当時の青少年(主人公のコペル君は15歳の設定)に対して明治生まれの吉野源三郎が問いかける形になっています。

そして今回の宮崎駿版ではその本を母親が息子に与えているという描写があります。そして、作中に出てくる塔は明治期に宇宙から降ってきたという描写、加えて明治第一世代の大叔父が改築して、行方不明になったと話が続きます。個人的には作中の大叔父は吉野源三郎なんじゃないかと少し思いました。

    今作の主人公は個人的にジブリの主人公っぽくないなと感じていて、ジブリの主人公らしいたくましさや真っ直ぐさがあんまりない気がします。『千と千尋の神隠し』の千尋と比較しても小賢しいですし恵まれていて、逞しい主人公と言うより小狡くて人間くさい主人公な気がします。

    そして主人公がめちゃくちゃ恵まれていること、父親が航空機部品会社の役員で戦争によって豊かになった宮崎駿の心象風景がめちゃくちゃ濃く反映されている気がします。

    もちろん、宮崎駿は戦争の記憶はほとんどないと思われますし、母親は結核で戦後無くなっているのでそのあたりは違います。ただし、宮崎駿の父が戦闘機の部品メーカーの役員で、一家が工場とともに宇都宮に引っ越した直後に宇都宮大空襲が発生していたりするので、そのあたりの罪悪感が本人の中にあっても不思議では無いかなと。

 そんな感じで主人公の真人は宮崎駿自身を仮託した印象です。でもちょっと美少年過ぎない?

    そんな戦中の御屋敷は和洋折衷が顕著でどこかちぐはぐな印象を受けます。それこそそのあたりは明治世代の吉野源三郎から戦中世代の宮崎駿に受け継がれた日本の形だったのかもしれません。

    そうそう、作中で声と音の使い方が軽妙で登場人物の声がなくなって音楽だけになるトーキーのような演出の絶妙でした。

本筋とは関係ないですけど、嫌味で正確の悪いどこにでもいるおばあさんのキリコさん、若かりし頃美人過ぎないですか?時間は残酷。同時に世界が違っても人格は本人の意志によって陶冶できるというようなメッセージがあるようなないような…。

  話を戻して、作中の大叔父は毎日毎日積み木を組み合わせ続けています。平和な世界を作るために…。なんとなくこれは明治第一世代へのリスペクトなのかなと感じるんですが、その大伯父が外から持ち込んだインコが徒党を組んで人間を食い始め、最後には大伯父の積み木を机ごと真っ二つにして世界を破壊してしまいます。なんとなくインコは軍国主義かナショナリズムのメタファーなのかなと思ったり。

そして主人公はインコに破壊される直前に大伯父から積み木を積んでくれと託されるのです。

ちょっとこのあとの主人公たちの解釈は怪しいので見直さないとダメだなとおもったり。

全体としてみた時にこれは宮崎駿の物語であり、彼がしてきたことを残したかったんじゃないかなと思うんです。そしてそれを現代の下の世代に見せることによって自らが次の世代に『君たちはどう生きるか』と問いかけて昔話から教訓を学ばせようとする、そういう三重の入れ子構成になっている気がしました。

『君たちはどう生きるか』年始の記事でも書いた気がしますけど、答えの出ない問ですね。でも私的にはヘンタイオジサンでさえなければ『僕はこう生きている』と胸を張れる気がするのです。そのあたりが画竜点睛を欠くって感じでヘンタイオジサンの歪みの根幹なんですよね…。

コメント

  1. 独裁姫 より:

    人それぞれ 視点が違っててこういうの面白いですよね。
    インコ達が軍国主義のメタファーなのは気づきませんでした。 確かに「ウラー!」と万歳 参照してるシーンもありましたし。

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