「はい、今日も始まりましたフェルミエールモーニングニュースのお時間です」
爽やかな声がスタジオに響き渡り、フェルミエールの多くのモニタやテレビに爽やかなアナウンサーの声が届く。
「今日も私、リエリ・グランデルがフェルミエールのトップニュースをお伝えします」
そういったのは清潔感のあるショートカットのアナウンサーだった。朝らしく爽やかな笑顔を浮かべながら指揮棒で画面の中に浮かぶトップニュースのヘッドラインを指し示す。彼女の着るホワイトスーツはピチッとしており彼女の清楚さとともにボディラインを余すところなく見せつけている。
「今日のニュースのヘッドラインはこの3つです!
『先月逮捕された強姦犯の裁判が始まりました。この凶悪犯に検察は終身刑を要求しました』
『惑星エデンで汚職で逮捕されたファン・サン大臣が無罪に!?一体現地で何が起こっているのでしょうか?』
『銀河警察特務捜査課の捜査が今週で終わりになります。一体どのような成果があったのでしょうか?』
そして今日の特集は最近国内の学園で銀河警察が人気になっていますが、この新しいムーブメントを今日のコメンテーターの方々と一緒に見ていきます」
そう言うとヘッドラインが消えてカメラが動き、今日のゲストたちを写す。
「今日のゲストは最近星川学園で生徒会長になりましたテッカさんです」
そういってメガネ姿の厳し目の表情を浮かべた少女を指し示す。ピシッと校則通りに制服を着こなしてツンと澄ました表情だ。つい最近まで風紀委員長だったのが突然生徒会長が『転校』してしまったために繰り上げで生徒会長になったのだ。
「よろしくおねがいします。星川学園2年生の生徒会長、テッカです今日はお招きくださりありがとうございます。できるだけ普通の学園生の立場でコメントさせていただければと思います」
「そしてなんと銀河警察特務捜査課のエリッサ=シトラス一等捜査官にもいらっしゃっていただいています」
そしてカメラが大写しになった先には白い銀河警察の礼服の中にほとんど無理やりグラマラスな体を押し込んだようにさえ見える金髪の美女、エリッサ=シトラス一等捜査官が映った。
「今日はこのようにフェルミエールのニュース番組に呼んでいただけて光栄だ。銀河警察を代表して意見を述べさせていただければありがたい」
いつもの凛々しい声が放送に乗ってフェルミエール中に届く。
「ではまずは最初のニュースから、先月逮捕された強姦犯の裁判が始まりました。なんと第三地区で三人の学園性をレイプした強姦犯に対して検察は終身刑を求刑しています。
まずはVTRどうぞ」
画面が移り変わり、裁判所の前に移り変わる。レポーターと思しきイケメンの男性がマイクを持って映る。
「今回のレイプ犯の男性はまったく反省の素振りを見せていません。『オレのことを誘惑したメス共が悪いんだ』などと意味不明なことをことを述べており仗助酌量の余地はまったくないと思われます。今回の裁判の特徴は事件の重要性を加味して陪審員が全員女性になったことがあげられます」
画面が再びスタジオに戻りアナウンサーのリエリがニッコリと笑顔をする。
「なるほど。今回の事件は我が国の歴史に戻る凶悪な事件だけに裁判の行われ方も非情に気になりますね。テッカさんは今回のレイプ犯の被害者の方たちと年齢が近いと思われますがどう思われますか?」
硬い表情のテッカが映る。
「そうですね。やはり私には理解できません。性行為はやはり愛する人同士でやるものですし同意なしに襲うなんて殺人とほとんど変わりません。やっぱり終身刑くらいのほうが安心できますよね」
「とはいえ、銀河警察としては司法プロセスの正当性という点から注目していきたいと思っている。また、銀河中で同様の犯罪が日常的に行われていることに対してフェルミエール国民からは銀河警察にさらなる支援をいただければありがたい」
「たしかにそうですね。今後も全銀河の治安のために銀河警察の方々には頑張って欲しいですね。
では次のニュースです。惑星エデンにおいて汚職で逮捕されたファン・サン大臣が無罪とされて不起訴処分になりました。この事件ではエリッサ捜査官も活躍されたそうですね」
リエリの笑顔がエリッサに向けられる。銀河警察を代表している彼女は一欠片も愛想のないクソ真面目な顔だ。
「ああ、確かにこの事件を直接捜査したのは私のチームだ。ファン=サン大臣は宇宙マフィアの取引現場にいたため現行犯だった。無罪になる余地は欠片もないと信じているが、もちろん銀河警察は裁判機関ではないので裁判当事国の主権を尊重する」
「他の星ではこんなひどいことがまかり通っているんですね。私も学園生ながら他の星のことにも関心を払っていきたいです」
「そうですね。テッカさんには今後のフェルミエールを、そして銀河を担う世代として他の星の事情にも関心を払っていただきたいですね。
惑星エデンの現地メディアによるとファン=サン大臣は女性法改正によって同国で違法薬物の流通が可能になった結果莫大な利益を得たと目されており、今回の裁判にも売買臭が行われたのではないかと考えられています。
では3つ目のニュースですが、銀河警察特務捜査課の捜査が今週で終わりになります。どのような成果があったのでしょうか?
今回はスタジオに銀河警察特務捜査課のエリッサ=シトラス一等捜査官に来ていただいています。今回の捜査の要点をかいつまんで説明していただけますでしょうか?」
相変わらず生真面目な口調でエリッサがキビキビ説明する。
「ああ、今回の捜査は惑星エデンで発見された人工寄生生物の研究拠点がこのフェルミエールにあるのではないかと疑いがあったため、特別捜査を開始した」
「なるほど、実際に成果はありましたか?」
「ああ、フェルミエールに秘密の研究所があることが発見され、違法遺伝子操作の疑いで二人の会社員を逮捕した。フェルミエール自治政府には協力大変感謝する」
「まさか、私達の身近にそんな凶悪な人たちがいたなんて信じられないですわ」
そうテッカが思わず漏らしてしまう。だが、エリッサは淡々と反応する。
「どこの国であろうとも秩序に逆らおうとする連中はいるものだ。大切なのは市民一人一人が犯罪を許さないという心がけを持つことだな」
そう言うとアナウンサーのリエリがニッコリ微笑んでいう。
「そうですね。でもその点でも意外な効果が銀河警察の捜査によって我が国にもたらされたみたいです。なんと最近女子学園生の間で銀河警察がジワジワ人気になってきているみたいです。そうですよね?テッカさん」
「はい、そうです。星を越えて正義を守る銀河警察に対して憧れる生徒は増えてます。たとえば、この銀河警察のシンボルのチャームなんかは結構みんなあちこちにつけているみたいです」
そういって銀河警察のシンボルの掘られた小さなキーホルダーをぷらぷらさせるテッカ。
「へー、こんなのがあるんですね!かわいいし、結構どこにでも合いそうですね」
アナウンサーのリエリもかなりノリノリで、逆にエリッサはすこしコメントしづらそうにしている。
「確かに、どんな形であれ銀河警察の知名度が上がるのはありがたいな」
そういつもの調子で言い放ったエリッサに対してテッカが口を開く。
「そうそう、エリッサ捜査官の知名度も高いですよ。すごいクールだって。もちろん私もそう思います。実は私、もともと警察官になって性犯罪者の取締りをしたいなって思っていたんです。でも銀河警察のことを知って、自分の星のことだけ考えてるのは視野が狭いって気がついたんです。だから将来は銀河警察に入ってこの銀河の秩序を一緒に守りましょう」
テッカが珍しく熱っぽく語る。
「ああ、それは光栄だ!銀河警察も熱意のある若者を求めているからな!是非ともに宇宙の巨悪と戦おう」
「ふふふ、いいですね。テッカさんには将来我が星を代表する捜査官になってほしいですね。それではフェルミエールモーニングニュースはここまでです。引き続き天気予報をお楽しみください。
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