[三倉圭織]
「フェラしろ」
もちろん私はフェラという言葉自体は知らないわけではなかった。けれども、自分でそんなことをしたことはないししたいと思ったこともない。
「おい、いらねーのか?
あ、それとも知らねーのか、フェラ」
一方的に黙っている私に対して岸和田君が言う。
「しゃーねーな、これもしつけの一環か。とりあえず跪けや、メス犬」
躊躇する私。しかし間髪入れずに怒鳴られる。
「跪けよ、じゃねーとこれやんねーぞ」
まるでその言葉に屈するように私は思わず竦んで膝を地面につけてしまう。怒鳴られたことが怖かったわけではない、そんなことは今までだって何度もあったし、言い返してきた。でも、いつの間にか私はパセシーに対して抵抗できなくなってしまっていた。それほどまでにあの男の指に挟まっているものは私にとって魅力的なものになってしまっていた。
膝を地面につけた私に対してまるで犬でも撫でる様に岸和田君が紙巻きたばこを持った手で撫でる。その甘い匂いが私の鼻孔をくすぐる。これではまるで本当に犬みたいだ。私はそう思ってしまう。エサのために命令に服従する犬…。
「ほら、ズボン脱がせろや」
私の鼻先に向かってジーンズに覆われたズボンが突きつけられる。先ほど指し示したときに香りがうつったのだろうか。かすかにタバコのにおいとあの甘い匂いがする。私は無意識に鼻をそこでひくひくさせていた。
気が進まないのに手が動く。なれない手つきでまごつきながら男のベルトをカチャカチャ外してしいく。それをまるでほめる様に私の頭が撫でられる。メス犬になってしまった私は自ら男のズボンを下ろしてしまう。目の前に現れたのは黒のボクサーパンツ。かすかにザーメンの匂いがする気がして、今度は私の股間がきゅんと反応してしまう。まるで私の体が私のものでないかのように岸和田君にどんどん操作されて行ってしまう。
ためらう私の頭にふたたび手が置かれる。まるで『言う通りにしなかったらおあずけだぞ』とでも言いたげにあの甘い匂いを漂わせて。
そして一瞬後、私は一息に彼氏でもない男のパンツを下ろす。ボロンと半だちのペニスが私の目の前に現れる。むせかえるようなオスの匂いが鼻をつく。
「じゃーな、とりあえず手で握って上下にしごけや」
そう命令される。私はかすかに残った理性を振り絞って抵抗しようとする。まだクスリが入っているわけですらないのだ。それなのに不良の言いなりにされている。それは結局脅されていたとしても私の意志ではないのか。それでもふらふらと私は憎い男の言われるがままになってしまう。
「んー、まだ抵抗すんのか?まぁ、いいや左手でオナニーしろよ」
鼻先に白くまるめられた紙が突きつけられる。中に入っているのはタバコ…そしてパセシー。言われるがままに私の左手がショーツの上からまだ湿ったままの割れ目をなぞる。
「さっきまでオナニーしてたんだろ、知ってるぜ。写真に濡れ濡れマンコ写ってたからな」
そのまま目の前で岸和田君はしゃがんで私と目線を合わせる。
「オナニーじゃもう満足できねーだろ?後で一緒に気持ちよくなろうぜ。でも、その前に準備運動だ。お前だけじゃなくてオレもオナニーしてくれよ」
そう私の目を見ながらささやきつつ、私の右手を優しくつかんで彼の男性器に添えさせる。されるがままに私は岸和田君のおちんちんを握ってしまった。そして彼は私の手をつかんで上下にしごきあげる。私はされるがままで、そして次の瞬間彼の手が私の手を離れ、それにもかかわらずわたしの手は彼の一物を握って上下させてしまう。
「オレがフェラっつったら左手はマンコ、右手はチンコだ。覚えれるだろ、優等生」
先ほどとはうって変わってとても冷たい声。いつの間に立ち上がっていたのか上から降ってくる。気が付けば私の左手はショーツの中に入っていて、右手は先走りでぬるぬるだった。まるで燃えるように熱い不良の男性器を握ってしまっている。
「オレの言うことをよく聞く犬にはご褒美をやんないとな」
そういって彼はサイドテーブルから黒い小さなビニール袋を取り出す。岸和田君がそれを開いた瞬間,今までになかったほどあの甘い匂いが部屋中に満ちる。私は一瞬で理解する。あの黒い袋の中にパセシーが入っているのだ。
その袋に指を軽く入れて、パセシーの粉をに三粒程指につけると、私の目の前でそれを自らの男性器の頂点にのっけて私の目の前に突き出す。その瞬間、私は『ご褒美』が何なのか理解した。
「ほら、ほしかった奴だぞ。しかも直接だぜ。オレのチンポごとしゃぶれよ」
それを聞くか聞かないかのうちに、私はまるごとその部分を口に入れていた。そのグロテスクな器官を口に含むことに抵抗がないわけがない。しかも、自分の宿敵で憎い不良のその部分を。それなのに私の鼻に抜けるのはあのパセシーの臭いをまとった男臭で、おもわず胸がドキンとしてしまう。
オスの臭いとともに鼻腔に抜ける豊潤で甘美な匂い。甘く私の理性をふやかしてとろかしてしまうその匂いを鼻先に突きつけられるだけで私は我慢という二文字を失ってしまう。我慢だけではない、理性や羞恥といった私にとって大切なすべてがふやけてしまう。だから、だから私はジュププププ、ジュパッんんんチュプっと恥知らずに淫らな音をたててその部分をしゃぶってしまうのだ。まるでパセシーだけでなく、その残りかさえも味わおうとするかのように。
「いいぜ、風紀委員長。最っ高にエロいぜ。わかるか、オレのものがでかくなってきてるだろ?」
そういって私の頭を愛玩動物のように無造作に撫でる岸和田君。
そして言われるまでもなく口の中で圧倒的に硬さを増す岸和田君のグロテスクな肉。それを口の中で感じながらそこから噴き出す圧倒的な男性ホルモンと、男を大きくしたことに対する訳の分からない自尊心によって私の下半身が今まで感じたことがないほどにキュンキュンしていた。
きっとさっき口に入れたパセシーのせいだ。私は自分に言い訳する。だってこんなの、ケイ君に一度だって感じたことがない愛しさだったから。彼にこんなにときめいたことなんてないから。
「おっし、硬くなったな、じゃあお楽しみのブツをやるからがに股でそこに立ってろ」
言われるがままにみじめなほどに下品ながに股で私は立ち上がる。岸和田君がセーラー服のスカートをまくり上げて私の左手でたくし上げる様に裾をもたせる。そして彼は背後から、私のすでに外からでもわかるほどにあからさまに湿った下着越しに自分のペニスでマーキングするようにこすりつける。男臭い匂いが私の下半身から漂い、そして彼の指が私の口に白く丸められた紙巻きたばこを咥えさせる。
そこから漂う甘い匂いが私をさらなる背徳の高みに押し上げようとする。私はまるで普通のことのようにいつからかポケットに入っていた岸和田君の名前の刻まれたジッポライターでそのタバコに火をつける。
その間彼は背後から私の胸をゆっくりとセーラー服の上からもみあげる。まるでマッサージするように丁寧な彼の手つきはがさつな不良のイメージとかけ離れていて、ますます私を行ってはいけない方向に推し進める。
パセシーの甘い匂いに包まれながら、徐々にふわふわとしてくる。周りが妙に明るくてなんだかとても幸せな気分になってくる。それが何の根拠もない麻薬によるものだとどこかで理解しながらも、そういったことを考えることすら面倒くさくてただただ幸せな気持ちを味わっていたくなる。
『オレの言うことを聞くと圭織は楽しい』『オレの言うことを聞くと圭織は楽しい』…
耳元でいつもの言葉がつぶやかれる。だんだんと言葉が優しい音色とともに私の胸の奥にじゅんじゅんと浸透してくる。
ああ、そうなんだ。私は翔平君のいうことを聞くと楽しいんだ。うん、楽しいんだ。あはは、なんだか楽しくなってきた、まだ何も言われていないのに…。
「ほら、ピースしろ」
私の耳に天の声が聞こえる。あはは、ピースしなきゃ。いえぇーい、ピース!ピース!
いつの間にか正面でスマホを構える金髪の少年に対してハイになった三倉圭織は嬉々としてピースする。がに股でスカートをたくし上げながら笑顔でピースする彼女にすでに風紀委員長らしさは微塵も残っていない。写真を撮る少年の下半身は自らの成し遂げた征服感に酔うようにいきり立っていた。少年の視線がいつの間にか軽蔑をはらんだものに変わったことに少女は気づかない。
「おらぁ、それが風紀委員長のポーズだ。覚えとけ、これからオレがやれっつったらそうするんだぜ」
なにそれ~、楽しい。ゲームかな。ふうきいいんちょーのポーズね。覚えたわ。あはは、もちろん覚えられるよ、だって私優等生だしぃ。いえぇ~い。
コメント