6月7日
[佐藤圭吾]
カオリの家の近くの喫茶店で勉強していた。昨日は結局最後までカオリは予備校の自習室には現れなかった。夜9時過ぎに体調が悪かったと連絡があっただけだった。俺はその間心配で心配で何通もメールを送ったのに。こんな風に考えてしまう俺はきっとカオリの彼女失格なんだと思う。
「ケイ君…ケイ君?」
そんな憂鬱な物思いにふけっていた俺にカオリが声をかけてくる。
「注文していたスムージーがきたわ。恥ずかしいからさっさといただくわよ」
柔らかい笑顔でほほ笑んでストロベリースムージーを指す。どこか気恥ずかしそうに顔を赤らめている。それもそのはず、彼女の前に置かれたスムージーに刺さっているストローはハート型に加工されていて、しかも飲み口が二本ある。
「やっぱり、いざ出されると緊張するわね。ほら、一緒に飲もう?」
そういってはにかみながら前髪をかきあげてストローに口をつける笑顔は誰よりもかわいくて、勢い込んだ俺は一気に飲み込みすぎてしまう。冷たい液体が一気に俺の唇の中に入ってきて思わずせき込んでしまう。
「ああ、ほら垂れちゃってるよ」
そういって口に入りきらなかった俺の唇の端のスムージーを彼女の白い細い指が拭って、その俺の口から出たものをペロリとカオリの赤い舌がなめとる。それは俺を興奮させるには十分すぎるほどで、その場の勢いを借りてこの前から思っていたことを口走ってしまう。
「あ、あのさ。次の中間試験、もし二人で学年10位以内に入れたらキスしよう!」
えっと、一瞬カオリが首を傾げる。それだけで俺は気恥ずかしくなってその場で打ち消そうとする。けれども、学校でのまじめなカオリからは想像できないくらい大きくほほ笑んでいう。
「そうね、がんばりましょう!」
いつも学年20位以内はカオリにとってはそこまで難しい目標ではない。けれども、俺にとっては一筋縄ではいかない難易度だ。
心の中でそんなことを考えながらガッツポーズをしていると、カオリが白い色の彼女のハンカチをポケットから出してごしごしと俺の唇を拭う。
「ほら、そんなことよりまだ垂れてるわよ。きちんとしなよ。
あ、このハンカチあげるからさ、代わりにケイ君のハンカチほしいな」
そうカオリがいたずらっぽくいう。絶対こんな表情のカオリのこと知っているのは世界で俺だけだ。そう思うと天にも昇る心地でますます勉強どころでなくなってしまう。なんとしても勉強頑張らないと。
6月16日
[三倉圭織]
かすかに頭痛がする。たぶんクスリが切れかけてるんだ。試験前なのに。
人気のないトイレ、放課後。私はケイ君の男物のハンカチを鼻に充ててその匂いを嗅いでいた。右手はすでにショーツの中に入っている。彼の匂いがまだかすかに残っている気がする。くちゅくちゅとかすかな水音。
まだるっこしい。頭痛が強まった気がする。まるでケイ君の匂いを拒否するように、あの甘い匂いに焦がれる様に。頑張らないと。いったい何度私は彼を裏切ってしまったのだろうか。
不良の岸和田君とは朦朧とした意識の中で一体幾度体を重ね、唇を重ねただろうかと思う。その罪悪感からか、最近はケイ君をもっと感じていたいと思ってしまう。本当を言えばこの前のデートの時、無理やり唇を重ねても構わなかった。それどころか幾度も妄想の中でケイ君とその先に進んだ。自分勝手な自分に自己嫌悪を覚える。
「…んんんんぁ…ん」
口から甘い吐息が漏れる。でももちろんケイ君がそうしないのも分かっている。付き合い始めた時に初めては受験が終わってからにしようって私が言ってしまったからだ。きっと普段の私の厳しいイメージと相まって彼は悩んで悩んで悩んだ末にああいってキスをねだったのだろう。私に嫌われたくない一心で。
ちゅぷっ、にちぇっっと第二間接まで入った指を出しいれするとショーツの中から粘った水音がする。
だから、私も頑張らないと。ケイ君とキスできるように勉強しなきゃ。一生懸命頑張らないと。そして、そのためには勉強に集中しないと。オナニーで発散できなくて悶々とするとか、頭痛で頭が動かないとかそういうのはダメなんだ。
「あぁんん…」
わずかに漏れる声。その悩まし気な響きが頭の中で反響して余計に頭痛がひどくなる気がする。たぶん、これぐらい我慢できるはず。それなのに、早めにと自分に言い訳しつつ私はカバンの奥底に隠していた黒いスマホをけだるげに取り出す。ダメだとわかりながらも、それでも飢えた人が目の前に置かれた食べ物に無意識に手を伸ばすように取り出してしまう。
ピカピカの黒色の最新型のスマホだ。私は機械には疎いほうだが高価なものだと一目でわかる。電源を入れれば現れる待機画面はピースサインをしながら股間を露出している最低な私の写真だ。いくらクスリで言われるがままだったとはいえひどい笑顔だと思う。そして何より、その写真を撮った時の記憶が私を責めさいなむ。だって、本当にあの時私は楽しいと感じていたのだから。それがあの卑劣な麻薬の影響だったとしても…。
ちゅぷっっと触ってもいないのに10日前のことを思い出して私の股間で愛液がすでに湿ったショーツの中で分泌される。
待機画面にパスワードとして設定された私が処女を奪われた日の日付を入力するとあの不良のグロテスクなほどに勃起した赤黒いペニスが待ち受け画面として現れる。その汚らわしいほどの赤黒い極太の肉棒に知らずと私の奥底がジュンとしてしまう。
入っているアプリは3つだけ。SNSとアドレス帳,地図アプリ。アドレス帳に入っているただ一人の名前を選択する。岸和田翔平と登録されているそのアドレスは備考欄に『いつものがほしかったらエロい自撮り送れ!』と書かれている。私はそれを無視して直接電話する。
「おそかったじゃねぇか。んで、なんだっ?」
わかっているはずなのに岸和田君がぶっきらぼうに言う。
「試験前だから・・・あの、頭痛がつらいっていうか…」
そのままいえるはずがない。言葉を濁そうとして、鬱陶しく感じられたのか、
「いつものがほしかったらエロい写真送れっつたろ。あぁん?」
脅すように言う、不良の声。こんなのでひるむ私ではないが、頼みごとをしている手前、声は務めて抑えようとする。
「ほら、今週は一度も叱らなかったでしょ。不良の誰も先生にチクってないわよ。だからね・・・」
「あぁん、それはカオリが自分で誓ったことだろーが。それとこれとは話が別じゃね?そんだけなら,
じゃーな。ほしけりゃ写真送れ」
そこで電話がきれる。取り付く島がないとはこのことだ。私は仕方なく、ため息を付いて手に持ったスマートホンを下の方におろしていく。片手でスカートをめくり、ショーツを下ろしながら自分の股間にむけてシャッターを切る。
いままで私の写真なんか好き勝手に撮りまくっているくせに何の意味があるんだろうか。そういぶかしみながらも仕方なく写真をメールに添付して送る。そうしている間も私の奥の方は我慢できないとばかりにに切なかくてもどかしかった。。
ピロリロリンっとすぐさまむなしい着信音がなってメールを受信する。
一言、『俺んちにこい』書かれていて下にマップが添付されている。私はため息をついて濡れたショーツを履きなおした。
ふらふらと頭痛に動かない頭で地図アプリに導かれるがままに岸和田家に向かう。切ない気持ちが下の方からとめどなくあふれてきてふらふらくらくらする。きっと頭痛がひどいから仕方ないんだ。試験のためだと言い訳が頭の中で何度も鳴り響く。私自身がいいわけだと理解しているというのに、それなのに我慢できない。
もう何度も訪れた豪邸、インターホンを押すと勝手口に案内される。そしてそのままいかつい男の人に岸和田君の部屋まで案内される。
「お、きたきた。待ってたぞ、圭織!」
そういってあの何かたくらんでいるかのような意地の悪い笑顔で私を招き入れる。部屋の中にはあの甘い香りがしていて、岸和田君の指の間にいつもの紙巻きたばこが握られている。無意識にその白い筒を見てしまう。
「風紀委員長のくせに、まるで犬だな。エサを前にお預けか、あぁん?
おら、エサがほしけりゃ芸をしろよ」
そういって紙タバコで自分の股間を指し示す。
「フェラしろ」
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