[岩亀征夫]
その日の夕方、私が与えられた机に向かって彼女たちの資料に念入りに目を通していると凪沙みかんが話しかけてきた。気持ち、どこか恥ずかしそうにもじもじしている。
「あ、あの、岩亀プロデューサーさん、ありがとうございます。
本当はいきなり事務所が買収されちゃってプロデューサーが変わるとかで、私不安でした。そんなこと私のキャラ的にほかの人に見せれるはずもないし、とても怖かったんです。。。でも岩亀さんがもともとファンで、とっても私たちのことをよく見てくださってたことがわってうれしかったんです。本当に有難うございます。
私にできるお礼ってこんなことくらいしかないんですけど…」
そうもごもごといってみかんちゃんは私の横によってくるとその歳相応の活発な体を私に近づけてきて。私の顔を指でおさえるとチュッと私の頬にくちづけしてきた。
確かに一瞬だったが、彼女の唇の柔らかい感覚が頬に残った気がした。
「あ、あの。すみません。こんなこと急にしてヘンタイですよね。でも私なんか、不安だったのに助けてもらえた気がして」
混乱したように取り繕う凪沙みかん。その姿がとてもかわいくて私は思わずぎゅっと抱きしめてしまった。
「いいんだよ、私ができることはなんでもするからね」
そういって娘とほとんど年が変わらない少女を抱きしめる。腕の中でふだんステージ上で詠って踊っている体が混乱に淡く震えている。その震えを感じながら私は外資系の企業を辞職して彼女たちのプロデューサーを本業とすることを固く決心した。娘と同じ多感な年頃の少女を放り出しておくことなどできない。私の手の中で震えているこの少女を助けるために私にできることをしないと。
その夕方、会社の方へ提出する辞表を予め準備して帰宅途中の車の中。事務所との連絡用にスマートフォンに一件の着信があった。路肩に車を止めて開けてみると、一枚の写真が送られてきていた。
「帰る途中で三人でプリクラ取ったから送りますね」
そうみかんちゃんのメッセージとともに三人のプリクラ写真が添付してあった。落書き機能で『プロデューサーさん、これからよろしくね』っと読める。私は一層彼女たちの信頼に報いなければいけないと強く思った。彼女たちの信頼にこたえ、トップアイドルへ導くプロデューサーとしての使命だ。
それを見て少しだけ新しい仕事への気合を入れていると再び仕事用のスマートフォンにメールの着信があった。
『選ばれた人のみの楽園へのご招待。ヤリやり・フィーバーナイト★
あなたは特別に選ばれました、今すぐ登録して町の裏側でもてあそばれる少女たちの姿を鑑賞しましょう。
今なら、衝撃のアイドルがハメドルになるまでの特別レポートがついてきます』
とタイトルに書かれていて、明らかにアダルトサイトのスパムメールに見える。ハメドル等という下品な言葉に私はせっかくいい気分だったのを壊されてちょっといらっとしながらそのメールを削除する。どうせ、ただの煽り文句で、そうでなければさほど似ていないかわいそうな女性を犠牲にしてのイメージプレイのたぐいだろう。
[蝶野静思]
街で二人組の女の子に声をかける。塩豚のおっさんに頼まれたからだ。おっさんの復讐のくせに俺に頼むとか納得行かねー。最近あのおっさんの独占欲はますます変態的に強くなってっから初めから他人に使わせる女の子に時間なんて割きたくねーってことだろう。まぁ、確かに計画全体から言えばオレの領分ではあるんだけどね。
「ねーキミ達かわいいね、オレさ、モデル事務所のスカウトなんだけどさ、今時間ある?」
「アタシら既に所属してる事務所があるからさ、路上キャッチに引っかかってる時間なんて無いんだけど」
そう、ツインテールのちびが言う。いつか絶対泣かすっと、イラっとしながらオレが食い下がる。
「じゃぁさじゃぁさ、オレとお茶しない。仕事なんていいからさ、キミ達可愛いから何でもおごっちゃうよ」
そういって微笑みかける。まぁオレだってさ、自分のビジュアルのレベルくらい自覚してるよ。昔ホストで働いてた時も全然売れなかったし。でもね、秘密結社ジョーカーに改造されてテンプテーションの能力を手に入れた時から、そんなのどうでも良くなっている。オレが適当に誘って笑えば、惹かれない女がいるはず無いのだ。生物としてフェロモンレベルで誘惑してっからな。後は本人の意思の強さが問題になるけど複数いりゃ大抵一人は落ちるからな。
「ええ、オジサン鏡の存在って知ってる?ナンパできるほどかっこいいと思ってるの?普通ぐらいだよ」
ロリが突っぱねる。
「ごめん、私なんか喉乾いてるんだけど。お茶だけだったらいいんじゃない?」
茶髪の活発そうな女子がそういう。おそらくコイツが凪沙みかんってやつだろう。元気そうなコイツがいずれイイ感じに変態になるのが楽しみだ。
「嬉しいな、じゃぁそこの喫茶店で。オレのおごりだから値段は気にしないでね」
そう言って少し高めの人が少なそうで通りから奥まった場所にある喫茶店に誘導する。
まぁ、最近俺が立てたイメクラ専用風俗用の建物なんだがね。一回ごとに異なるシュチュエーションが堪能できるように内装を改造して、本職の女達を洗脳して働かせている。昼間の間稼働ゼロなのももったいないので喫茶店は稼働させてるってわけだ。
「うんとね、あたしシストロベリーパフェ」
「私はアイスティー」
二人のアイドルたちが思い思いのドリンクを頼む。ジョーカーのスタッフが勿論洗脳精液をぶっこんで提供するってわけだ
「うわ、まずっ。ちょっとこれ何。なんでパフェが生臭いわけ!?アタシ帰る!!」
めんどくせーチビが相変わらず文句垂れる
「まぁ、まぁ、それはオニーサンのせいじゃないし。残せばいいでしょ。いちご、あなたさっきからすこしわがままじゃない?」
そうやんわりとリーダーのみかんが注意する。パッと見は元気っ子だが、ある程度はリダーとして気も使えるらしい。精々頑張って男を楽しませる気の使い方をおぼえてもらいたいもんだ。
「キミ達どこの事務所なの?ほら、普通に可愛いからさうちの事務所に引っ張れないかなって」
「いきなり仕事の話とか、マジオジサンコミュ症でしょ」
「いま所属している事務所との契約上、他の事務所との二重契約は禁止されてるからね、ゴメンねー」
ここまでは予定通り。どーせ岩亀用のダミー事務所なんてこの件が片付いたらたたませて、オレの「ラヴラヴドリームアンドセックス」事務所に吸収する予定なんだから。
「まぁ、ばれない程度でいいからさ。うち服のモデルとかメインだから顔出し無しでバレないようにできるしさ、別に二人ともじゃなくてもいいからさ。ほら、そこのスタイルいいキミとかさ」
そういって凪沙みかんにむかって微笑んでやる。こいつを落とせば、たぶんいちごもついてくるだろう。この計画が始まった時点でいちごの父親の会社にジョーカー経由で圧力をかけて失業させたから、家計に金を入れているのはコイツだけのはずだからな。強がりを言っていても金である程度釣れるだろう。
「顔出しなしかー。うーん、それんなら…・」
「ちょっと、みかん、あんた何考えてるの!」
心がかすかに動いているみかんにいちごが注意を促す。
「大丈夫大丈夫、オレが保証するって。顔隠せばばれないって」
そういってみかんに笑いかける。まだ疑っているみたいだが、コイツ喉乾いてたのかアイスティー飲み干してるしいけるだろ。
「うーん、でもお金、ほしいんだよねぇ…・。でも、あやしいし…」
仲間思いのみかんの頭の中には赤井家への経済的な配慮があるんだろう。かすかに、いちごを見る。
「全然あやしくないよ。そんなに深く考える必要ないって!」
そうみかんに笑いかける。
「何それ、あたしのためだっていうの?あたしなら大丈夫だって言ったでしょ?」
「ううん、私もお金ほしいし、新しい服とか休みの時に遊ぶお金とかね、あったほうがいいじゃん」
そういってウィンクするみかん。
渋い顔をしながらいちごが言う。
「そう…なの?じゃぁしかたないのかしらね。あんたはいっつも危なっかしいんだからあたしが付いていてやんないとね」
微妙な空気が流れる。オレは心の中で二人に中指を立てつつガッツポーズ。2人確保―!。
「わかったよ。仕事は毎回2人一緒ね、オーケーオーケー。じゃぁ、これオレの連絡先ね。せっかく受けてくれたから事務所によるついでにゲーセンよってこうよ。何でもおごるよ」
ちなみにゲーセンはオレの事務所の2階部分にある。中サイズの大きさで、やっぱりオレの息がかかっている。ゲームの勝ち負けからプリクラのデータまで操作し放題ってわけだ。まぁ、秘密結社から街を守っていた正義のオーダーセイバーがこの街から一掃されたおかげで街全体がほとんどジョーカーのものになりつつある。まだ、比較的隠してるけどね。秘密結社だから秘密にしないとね。
二人がわいのわいのいいながらプリクラの筐体の中で写真をとっている。
オレは手を伸ばしてまず、ジーンズに包まれたみかんの健康的に引き締まった良い形の尻を撫で回す。はじめはビクッとしたがすぐに身を預けてしまう。マジこいつちょれぇ、そこで後ろから密かに三人の尻の写真を撮る。ついで、軽くみかんのケツも触ったが、手で追い払われてしまった。ま、この後契約させて、定期的にオレと会って洗脳性液入り飲料を飲ませ続けりゃ数日ってところだろうな。
数時間後、オレは最近作り上げた会員制のウェブサイトを更新していた。悪の秘密結社でこの町の裏の支配者でもあるジョーカーのサポーター向けの会員制サイトの有料サイトだ。月額利用料は最安でも10万円からだが、洗脳済みの女子高生の援助交際ができたり、気に食わない女の洗脳申請をすることができたりする。今後はコンテンツを拡充してこの町の有力者たちと良好な関係を維持していくのが俺の仕事だ。
町のほとんどの人間は存在すら知らない貴重なサイトだが、DMを受け取った岩亀はただのスパムメールと判断して登録しなかったようだ。
あたらしく作られたページ『チンデレラプロジェクト―わたしたち、ハメドルになります』には『ふるーつじゅーす』の 二人が使ったプリクラの画像データを使って適当に作った。微妙にピンボケになってしまった二人の持っているものと違ってクリアな写真を使っている。
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