【新章】肆日目 昼休み 可愛くSNS露出自撮りデビュー 三ヶ森学園 臣河沙田輝

最近友達がおかしい、そう競から相談されたのがきっかけだった。あたしだって別に機械に強いわけじゃない。でも弓道部のみんなが機械に弱すぎるから仕方なく、スマホとかの相談に乗ることが多くなった。そして競の先輩の話をされたのだ。

「ボク、よくわからないんだけど、えすえぬえす?とか言うのが流行ってて弥尋先輩がスマホでどこ行っても写真撮ってるんだけど。えすえぬえすってなにか知ってる?流行るってことは風邪みたいな病気なのかな」

同じ魔祓い巫女としてちょっと現代に適応できているのか疑問になるレベルの認識だ。とは言え魔祓い巫女の家系一般に古い家が多いせいで確かにテクノロジーには疎いところがある。一応学校の情報の授業で使い方をやるおかげでメールくらいは使えるみたいだけど。

「あんたねぇ、SNSってネット上のただの交換日記よ。流石に21世紀に生きててその認識はちょっとどうかと思うわよ。それに、今どきティーンならSNSに写真上げるなんてみんなやってるし」

友達としてあんまりにもずれてる競に苦言を呈さざるを得ない。まぁ、今どきそんなこと一々気にしても仕方ないし。流行のインスタントとかフェスブックとか、SNSはウチの学園でも人気だし。でもそんなあたしの呆れた雰囲気は次の競の一言で吹き飛んでしまう。

「ねぇ、そのえすえぬえす?ってさ、パンツとかの写真も撮ったりするのも普通なのかな?」

「うーん、そういう人もいないわけじゃないけど…。普通じゃないね。そんな事してるの?」

「うん、弥尋先輩が最近おっぱい出したり、スカートめくったりして写真撮ってるんだけど」

「あー、たしかにそれは普通じゃないわ」

 妖魔とは関係なさそうだし、大人みたいにあれこれ言うのもやだけど、確かにそんなことを聞いたら放っとくこともできない。あたしはとりあえずあまりにもローテクな競じゃなくて、スマホで情報を集め始めた。

 だけど、実際思った以上に苦労しなかった。というのもフェスブックで検索したら競の言う弥尋先輩、つまり下坂弥尋は簡単に見つかったのだ。実名で登録して顔出しで写真をあげまくっている。

「あちゃ~」

 思わず声が出る。登録してから半年以上当たり障りのない日記しか更新していなかったのにこの数日急激に過激な投稿をしている。ほとんどがかなり際どい格好で数十秒の動画だ。例えば、最初の方では恥ずかしそうにしながら太ももをねっとりとカメラが上がっていって、遂にはスカートの中に入る感じだったのが、最近では学校のプールで授業の合間に撮ったらしい。学校指定の水着からおっぱいを恥ずかしそうに露出する動画や自分の部屋らしい場所で嬉しそうにかなり体のラインのでるコスプレをする動画をアップロードしてる。

ほんの数日なのにかなりのスピードだ。一日五本以上あげている日もある。気がつくと昼休み終了のチャイムが鳴っていた。教室で見るものじゃないのに、昼休み中ずっとあたしは先輩のエロ動画を見続けてしまった。

午後からの授業中、あたしはだいぶ頭を悩ませる弥尋先輩は競の近所に住んでいて昔から勉強とかを見てもらっていたらしい。でも上級生で下級生のあたしからやめたほうがいいとはなかなか言いにくい。

しかも弥尋先輩は美術部の部長だったせいでなかなかのインフルエンサーのようだ。弥尋先輩だけならなにかあって変なことに目覚めちゃった先輩の思春期の黒歴史で終わるかもしれないし、それならあたしだって気にするほどのことじゃないのかもしれないのに、弥尋先輩のエロ自撮り動画をみて既に真似をし始めている後輩達がいる。

午後の休み時間、クラスの美術部の部員を見ていると隅の方でコソコソスマホをスカートの中に突っ込んでいる。イヤイヤ、あんたそのとり方はないでしょ。しかも下手くそすぎて子供っぽいピンクのパンツが見えてるし。おもわず心の中で突っ込んでしまう。

でも、これはよくないな~。先輩が一人でバカやるのは勝手だけどあたしのクラスメートまで巻き込むのは気分がいいもんじゃない。

放課後、たまたまさっき下手くそなパンモロ写真を撮っていた美術部員の女子と同じ班で掃除当番になる。しかも都合がいいことに女子トイレの掃除だ。こそこそ話にはうってつけだ。

「ねぇ、あんたって美術部じゃん」

 そう声を掛ける。さっきエロ自撮りを取ろうとしていたわりに垢抜けない地味な女子だ。

「あ、沙田輝さん。なんですか?」

 適当に女子トイレの個室の一つに押し込む。あれ、これじゃぁなんかあたしがいじめてるみたいだ…。

「あたしみたんだけどね、さっきあんたパンツの写真撮ってたじゃん。あれいったいなんなのさ?最近流行ってるの?」

 まずは情報収集から。いきなり注意したって絶対直さないもんだし。だってあたしだっていきなり自分のセンスを否定されたら反発するもん。

「あー、見られちゃってたんだ…。沙田輝さん、えっと最近ネットではやってるおまじないで恥ずかしいところを長く撮影して投稿してるって遊びなんですけど…。なんて言えばいいのかな…とりあえずこの動画見てみてくださいよ」

 そういって彼女がさっきスカートに突っ込んでいたスマホを目の前に突き出してなにかの動画を再生する。文字だけの動画だ。

『あなたにこれができますか?』

 大きな文字が表示される。それとともにサラサラとした薄いBGMが流れ始める。ホワイトノイズっていってもいいかも。

『恥を捨てて新しい人生へ=シェイムチャレンジ=』

 サラサラ妙にノイズが耳に残る。動画もダサいし手作り感満載なのになんでか目が離せない。

『パンツ・ブラ・マンコ・アナル・オッパイもぜ~んぶ人に目せるのは恥ではありません』

 ノイズが少し大きくなった気がした。ザワザワとまるで耳に粘着するみたいな執拗なノイズの合奏に気を取られる。画面上のメッセージはわかるようなわからないような…。

『かわいい下着は誰のため?ぴったり閉じた清楚オマンコを撮影して真面目だって証明しましょう。みんな認めてくれますよ』

「みんな…認めてくれる」

 そうつぶやく。SNSってそのための道具だし、みんなが認めてくれるなら…。動画は終わったけどノイズは止まない。

「沙田輝さん、みんなに認めてもらおうよ」

 クラスメートの声。確かにあたしのほうが彼女よりみんなに認めてもらえる。だって撮影の技術もパンツの可愛さもスクールカーストだって彼女よりずっとあたしのほうが上だから。

 あたしはスカートをふんわり持ち上げる。スカートの中にスマホを入れたりしたらフラッシュを焚かないと撮影できないし、ナチュラルなパンチラ感がだせない。学園生のブランドの象徴の制服も写せないし、あたしの顔が写っていないんじゃあたしが認められたことにならないから。

 スカートを半分だけもちあげて黒と白のボーダー柄のおしゃれパンツを制服越しに露出する。カレシはいないけどいつできてもいいように下着もこだわるのがイケてる女子のたしなみだと思う。ふふふ、ひょっとして動画を見てあたしのことを認めてくれる未来のカレシが現れるかも。そう思うと自然と笑みが溢れる。

 一分以上撮影したかな。これ以上長くなると動画投稿が厳しくなるから、仕方なく撮影を終える。

「認めてもらえるといいね」

 そうクラスメートがささやく、シュワシュワざわめくようなノイズのさざ波の中で私のはじめてのシェイムチャレンジ動画がアップロードされる。認めてもらえるに決まってる。だってあたしだから。

「最初のシェイムチャレンジおめでとう。これあげるね」

 そうクラスメートがかわいい白い球体のついたストラップをくれる。眼の前では一気にシェアやグッドの数が増えていく。ああ、あたしはこんなにたくさんの人に認められてる。嬉しくてドキドキ胸が躍る。もっとみんなに認められたいな。

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